第1話 『退屈』
二十五歳、フリーター。忙しいけど退屈だった。
バイト先のスポーツ用品量販店での仕事は楽しいし悪くない。サッカーコーナーの担当になってからは毎日サッカー好きのお客さんと話したりしながら気楽に働けるし、レイアウトや商品出しも嫌いじゃない。レジの女の子は可愛いし、バイト仲間とは毎日遊びに出かけるくらい仲良いし、それなりには稼げるから何も文句はなかった。
いつものように新しく入荷してきた商品をダラダラとダンボール箱から出しながら、店内で流しているR・バッジョのDVDを観ていた。
「すいません」
「はい!なんだよ…リョウスケか…」
声をかけられて営業用の返事をしたのが失敗だった。リョウスケはニヤニヤとシテヤッタリの笑みを浮かべてた。
「あいかわらずサボってるね」
「サボってない」
リョウスケは昔から仲の良い女友達の彼氏で、サッカーをやってるらしく何度かその女友達に連れられて店に来て話してるうちに仲良くなった。
「今日はなんか探しにきたのか?」
「いや、タケちゃんの顔見にきただけ」
「ナンだソレ…」
液晶画面の中ではPKを外したR・バッジョが膝を抱えてピッチに座り込んでいた。94年ワールドカップで最も印象的な場面。
「ってかさ、タケちゃんサッカー経験者だよね?」
「一応ね、中学まではやってたよ」
高校ではバイトと遊びに夢中でサッカーをしてる暇が無かった。小学からずっと一緒にサッカーしてた奴らと違う学校になったて理由もあったけど。
「今週の日曜日に練習試合あるんだけど助っ人で来ない?人数足りないんだよね」
「練習試合?どこのチーム?」
「バイト先で遊びのサッカーチーム作ったんだよね。それで友達が社会人でサッカーやってるからそこのチームと練習試合するんだ」
「マジで」サッカー好きの俺にはたまらなく魅力的な話だった。ちょうど最近サッカーコーナーになってからは実際にサッカーをしたいと思っていたし。
「その日バイト入ってるから、休みにもらえるか聞いてみるよ。場所と時間は?」
「朝の9時に当麻のアスレチックグランド」
「朝9時か…」
「誰か他にもこれそうな人いたら連れてきて」
「OK」
早速、休憩中に社員と交渉して日曜日の休みをゲットした。クソ忙しい時期が終わったばっかりだったので意外とすんなり休みがもらえてラッキーだった。いつもなら日曜日に休みなんて絶対もらえない。
とにかく、忙しいけど退屈な毎日から抜け出せそうな予感にワクワクしていた。
バイト先のスポーツ用品量販店での仕事は楽しいし悪くない。サッカーコーナーの担当になってからは毎日サッカー好きのお客さんと話したりしながら気楽に働けるし、レイアウトや商品出しも嫌いじゃない。レジの女の子は可愛いし、バイト仲間とは毎日遊びに出かけるくらい仲良いし、それなりには稼げるから何も文句はなかった。
いつものように新しく入荷してきた商品をダラダラとダンボール箱から出しながら、店内で流しているR・バッジョのDVDを観ていた。
「すいません」
「はい!なんだよ…リョウスケか…」
声をかけられて営業用の返事をしたのが失敗だった。リョウスケはニヤニヤとシテヤッタリの笑みを浮かべてた。
「あいかわらずサボってるね」
「サボってない」
リョウスケは昔から仲の良い女友達の彼氏で、サッカーをやってるらしく何度かその女友達に連れられて店に来て話してるうちに仲良くなった。
「今日はなんか探しにきたのか?」
「いや、タケちゃんの顔見にきただけ」
「ナンだソレ…」
液晶画面の中ではPKを外したR・バッジョが膝を抱えてピッチに座り込んでいた。94年ワールドカップで最も印象的な場面。
「ってかさ、タケちゃんサッカー経験者だよね?」
「一応ね、中学まではやってたよ」
高校ではバイトと遊びに夢中でサッカーをしてる暇が無かった。小学からずっと一緒にサッカーしてた奴らと違う学校になったて理由もあったけど。
「今週の日曜日に練習試合あるんだけど助っ人で来ない?人数足りないんだよね」
「練習試合?どこのチーム?」
「バイト先で遊びのサッカーチーム作ったんだよね。それで友達が社会人でサッカーやってるからそこのチームと練習試合するんだ」
「マジで」サッカー好きの俺にはたまらなく魅力的な話だった。ちょうど最近サッカーコーナーになってからは実際にサッカーをしたいと思っていたし。
「その日バイト入ってるから、休みにもらえるか聞いてみるよ。場所と時間は?」
「朝の9時に当麻のアスレチックグランド」
「朝9時か…」
「誰か他にもこれそうな人いたら連れてきて」
「OK」
早速、休憩中に社員と交渉して日曜日の休みをゲットした。クソ忙しい時期が終わったばっかりだったので意外とすんなり休みがもらえてラッキーだった。いつもなら日曜日に休みなんて絶対もらえない。
とにかく、忙しいけど退屈な毎日から抜け出せそうな予感にワクワクしていた。
第2話 『ロッカールーム』
「相手のチームって強いんですか?」ワッタは眠そうな声でそう言って、くわえた煙草に火をつけた。
誰か誘おうと思って思いついたのが前のバイトで少しだけ一緒に働いていたワッタだった。すげぇ仲良しってほどの仲にはなってなかったけど、飲み会のときにサッカーの話で盛り上がったのを憶えていたから。
「分からん、社会人リーグでやってるチームらしいけど」
「こっちのチームは?」
「けっこう初心者ばっかりって言ってたから…微妙じゃないかな」
「ヤバそうですね…」
お互いまだ距離感が分からない感じで、ワッタと俺の会話はぎこちなかった。高校を卒業したばっかりのワッタと俺とでは歳も結構離れているから仕方ないといえば仕方ない。
「今って調理師の学校だっけ?楽しい?」
「楽しくはないっすね、実習以外はほとんど寝てます」
「マジか…やっぱり専攻は中華なの?」
「そうっすね、中華しか考えてないんで」
中華料理のレストランが前のバイト先だった。ワッタは今もそこでバイトしている。ヒョロっとしてやる気なさそうなのに仕事はしっかりできる。そんな子。
途中、道に迷って若干遅刻気味だったけど、グランドに着いた時にはまだメンバーは揃っていなかった。
「助っ人連れてきたから」先に着いていたリョウスケにワッタを紹介して、何年かぶりに納戸の奥から引っ張り出してきたスパイクに履き替える。中学の時に使っていたスパイクだったけど、サイズはピッタリ、ジャストフィットだった。
座って靴紐を結びながら、ところどころ芝の剥げたグランドを眺めていた。
「マジ久しぶりでテンション上がってきました」そう言ってワッタは立ち上がり、持ってきたボールで軽くリフティングを始めた。柔らかくて繊細なタッチ、見てすぐにかなり巧いと分かるぐらい。
「よし、アップしようぜ!」
はしゃいでるガキみたいに、俺とワッタ待ちきれない様子でグランドに飛び出した。二人とも足元のスパイクは今にも穴が開きそうなぐらいボロボロで、放課後毎日一緒に遊んでるみたいな、なんだかそんな懐かしい感じがした。
誰か誘おうと思って思いついたのが前のバイトで少しだけ一緒に働いていたワッタだった。すげぇ仲良しってほどの仲にはなってなかったけど、飲み会のときにサッカーの話で盛り上がったのを憶えていたから。
「分からん、社会人リーグでやってるチームらしいけど」
「こっちのチームは?」
「けっこう初心者ばっかりって言ってたから…微妙じゃないかな」
「ヤバそうですね…」
お互いまだ距離感が分からない感じで、ワッタと俺の会話はぎこちなかった。高校を卒業したばっかりのワッタと俺とでは歳も結構離れているから仕方ないといえば仕方ない。
「今って調理師の学校だっけ?楽しい?」
「楽しくはないっすね、実習以外はほとんど寝てます」
「マジか…やっぱり専攻は中華なの?」
「そうっすね、中華しか考えてないんで」
中華料理のレストランが前のバイト先だった。ワッタは今もそこでバイトしている。ヒョロっとしてやる気なさそうなのに仕事はしっかりできる。そんな子。
途中、道に迷って若干遅刻気味だったけど、グランドに着いた時にはまだメンバーは揃っていなかった。
「助っ人連れてきたから」先に着いていたリョウスケにワッタを紹介して、何年かぶりに納戸の奥から引っ張り出してきたスパイクに履き替える。中学の時に使っていたスパイクだったけど、サイズはピッタリ、ジャストフィットだった。
座って靴紐を結びながら、ところどころ芝の剥げたグランドを眺めていた。
「マジ久しぶりでテンション上がってきました」そう言ってワッタは立ち上がり、持ってきたボールで軽くリフティングを始めた。柔らかくて繊細なタッチ、見てすぐにかなり巧いと分かるぐらい。
「よし、アップしようぜ!」
はしゃいでるガキみたいに、俺とワッタ待ちきれない様子でグランドに飛び出した。二人とも足元のスパイクは今にも穴が開きそうなぐらいボロボロで、放課後毎日一緒に遊んでるみたいな、なんだかそんな懐かしい感じがした。

