2005-10

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第24話 『諦メマセン』

 「良いチームですね」前半が終了して引き上げるときに、審判をしていた人にそう言われて、俺はなんだか御満悦。スコアも3-1でリードしてるし。
 「このままいけば絶対勝てますよ!」 
 初めて前半をリードしたまま終えて、ハーフタイムのウサギたちは朝の鶏みたいにハイテンション。極度の興奮状態だった。誰もが初勝利を予感して舞い上がっていた。
 「あいつら上手いな…」ただ1人、ユアサだけが冷静な表情で、アップを始めた相手チームの控え組みの動きを眺めてそう言った。
 ピッチでは前半、主審と副審をやってくれていた3人が軽いアップを始めていた。ユニホームではなく、緑色したビブスを着て。3人ともかなり上手そうな感じ。
 「上手そうだなあの3人…」ユアサの隣に行って一緒に眺めてみる。
 「あのアフロっぽい人がヤバイですね」さっきの主審の人だ。パス回しをしているだけなんだけど、明らかにレベルの高さが見て取れた。
 「後半出てくるのかな…」
 「出てきそうですね」
 もう勝利を確信したようなムードの中、嫌な予感が胸を走った。もしかしたら本当の戦いはこれからなのかもしれない。

 後半、予想通りラプターズはメンバーを入れ替えてきた。14番がセンターバックに入って、ボランチにはビブスを着たアフロ、他にビブスを着た奴らがトップと右サイドバックにそれぞれ代わって入ってきた。
 「このまま勝つぞ!」もう1度円陣を組んで、アッチが気合を入れ直した。後半開始。
 開始してすぐに、質の高い動きと技術でアフロが完全に中盤を支配し始めた。本職のセンターバックに入った14番が上手くラインをコントロールして、アズレプのFW陣をガンガンオフサイドに引っ掛ける。たのみのタクちゃんには右サイドバックに入った奴が対応して自由にプレーさせてくれない。完全に流れを持ってかれた。
 そして後半8分、右サイドをオーバーラップしてきたビブスの7番がマッチョをキレイに抜き去ってフリーになった。真ん中では同じくビブスの10番が待ち構えている。
 「10番!」声をかけたアタルとユアサが挟み込むように10番をマーク。だが、7番はかまわず10番に正確なクロスを送った。
 ヘディング、そう思ってカメが身構えたが、10番はそのボールをユアサとアタルに挟まれながら胸でトラップ、落ち際を太ももで右にコントロールしてアタルをかわすと、そのままボレーでシュートを放った。タイミングを外されたカメは全く反応できずにゴールを許してしまった。いきなりの失点。
 なおも後半12分、アフロのスルーパスから抜け出した10番がユアサを振り切ってカメと1対1に、良いタイミングで飛び出したカメだったが、シュートフェイントから股間を抜かれて同点ゴールを奪われた。
 ハーフタイムの空気から一転、アズレプに重たい空気が流れた。
 「まだです!取り返しましょう!」ケイタの言葉が虚しく響く。連続失点のショックと疲労から、みんなの動きは明らかに悪くなっていた。とくにワッタは久しぶりの試合なだけに、肩で息をしいて前半のようにボールをキープできない。
 そして後半15分、簡単にDFラインをアフロに突破されて、アズレプは逆転された。悔しがってグランドに拳を叩きつけるカメ…
 全員が下を向いて疲労に肩を震わせていた。絶望感が漂うグランド。俺も腰に手をやって俯いていた、逆転されたショックはデカい。
 「顔上げろよ!まだ終わってないじゃん!絶対取り返せるって!」馬鹿デカイ声でアッチが叫んで、ボールを走ってセンターサークルまで待ってきた。「らしくないじゃん、諦めるなよ!」そう言って怒りにも似た表情で俺にボールを渡す。
 「誰が諦めたって?」
 「じゃあ、下向いてないで取り返してこいよ」
 実際、俺は諦めかけていたのかもしれない。もうダメかもってどっかで思ってた。そんな自分がなんだか恥ずかしかった。
 「まだ終わってないからな!取り返すぞおまえらっ!!」恥ずかしいからデカイ声でみんなに向かって叫んだ。俺は諦めてないって態度で示す。
 「それでよし」アッチはニコッと笑ってそう言った。
 ウサギたちはそれぞれに顔を上げて前を向いた。まだ諦めるには早すぎる。


 
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第25話 『ボールの行方』

 ここはサン・シーロでもカンプ・ノウでも国立でもない。地鳴りのような声援を送るサポーターも、怒号のようなブーイングを送る観客もいない。小さな街の球技場、公式戦ですらない、ただの練習試合。
 だけど、おれ達はそれこそ死にものぐるいで走り回った。体はもう思うように動いてはくれないぐらいに疲弊しきっていたけど、それでも座り込むわけにはいかないから。なんの価値があるのかなんて分からないけど、ただ勝ちたかった。
 「もうパス来ても追いかけれないからディフェンスにまわる…タケがFWに上がってくれ」そう言ってよっPは中盤に下がった。
 俺は相手のDFラインの手前で足を止め、そこで勝負の時を待つ。全速力であと何回走れるだろうか、その何回かを攻撃だけにかけてみる。絶対にチャンスはあるはずだ。
 ずっと攻められ続けていたけど、DFラインとGKのカメがギリギリのトコロで失点を防いでいる。とくにカメは浅くなったDFラインの裏を、何度もタイミングの良い飛び出しでカバーしてた。
 試合終盤、右サイドを相手に突破されそうになったけど、1度抜かれながらもケンが必死になってボールを取り返した。そのボールはよっPへ、とっさの動き出しでフリーになったケイタがよっPからのパスを受けた。
 ケイタが敵を1人かわして、ルックアップした瞬間に目が合った。絶対くる、そう感じて動き出すと、ケイタは迷うことなく俺にパスを送った。
 視界の端で相手14番が距離を積めてきてるのが分かった。まともな1対1だとぬけるかどうか微妙なところ。ケイタからの浮き球のパスはちょっと短くて、俺の1歩後ろでワンバウンド、俺はそのボールを右足のアウトサイドでフワッと浮かせた。一瞬、俺の体と重なってボールを見失った14番の反応が遅れる、ボールは14番の頭上を抜けた。俺は勢いよく反転してその横を駆け抜けると、目の前には広大なスペース。後はキーパーだけ。
 このチャンスに全て込める気持ちで全力で走った。相手GKが悪くないタイミングで飛び出してきたけど、決めれるって予感、シュートコースがハッキリと見えた。だけどシュートを撃とうと思った瞬間、右足の踵に激痛が…後ろから追いかけてきたDFのスパイクで踏まれた感じになり、俺は態勢を崩した。
 GKがもう目の前に、後ろからはDF。なんとかして撃たないと、これが最後のチャンスかもしれない。ホンの少しだけ、GKの足がボールに触るよりホンの少しだけ早く、俺のつま先がボールに触れた。交錯して目の前が一瞬真っ暗になったけど、すぐに体を起こしてボールの行方を追う。
 コロコロと力なく転がったボールは、左ポストをかすめ、ゴール裏の暗闇に逸れていった…
 それが本当に最後のチャンスだった。



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第26話 『胸を張れ』

 試合は終わった。トータルスコア3-4.
 「最後まで胸張って挨拶するぞ」アッチの言葉に、みんな顔を上げて整列。センターサークルに並んで相手チームと挨拶をした。
 「良い試合だったね、足大丈夫ですか?」握手をしながら相手の14番がそう言った。
 「大丈夫ですよ、近いうちにまた試合したいですね」俺は胸を張ってそう返した。実際はかなり痛いんだけどね。
 相手のベンチにも全員で挨拶をして、俺はスーツの監督とも握手をして話をした。
 「いや~みんな若くて元気良いし、良いチームだね。うちも助っ人がいなかったら危なかったよ」監督はそう言ってニコッと笑った。たぶん助っ人ってのはあのビブスの3人のことだろう。道北リーグのチームでプレーしている人たちらしい。
 「仕事でこれない奴らが何人かいてね、今度はしっかりうちのチームで人数揃えて試合したいね」
 「是非、お願いします」もう1度、今すぐにでも試合したい気分だった。体は限界疲れているけど、気持ちはそんな感じ。
 アズレプベンチに戻ると、みんな疲れきった顔をしてた。けど、なんだか活き活きした目をしてた。口々に言うことは同じ、リベンジマッチをしたいって。
 「もちろん、負けっぱなしは体に良くない」俺はみんなの気持ちにそう答えた。

 帰りの迎えが来れないらしいので、ケイタを家まで送ってやることに、いつもは家の近いカメが送り係なんだけど、カメはなんだか用事があるらしいので。
 市内からちょっと離れたケイタの家まで、アズレプの魂は悔しさから俯いて、嘆いてばっかりだった。
 「勝てましたよね、俺がもっと後半から入ってきたビブスの人を止めれれば、絶対勝てましたよね…」ケイタはあのアフロにいいようにやられたのが悔しくって仕方なかいみたいだ。
 「ケイタだけのせいじゃないよ、みんなの責任じゃん」
 「でも…実際そうじゃないですか、完全にゲーム作られちゃったし…」
 「おまえ1人のせいで負けるんだったらさ、それこそ俺らの責任じゃん。チームなんだから」そう言うと、ケイタはニコッと笑った。それと同時に悔しそうな表情も。
 「自分が負ける以上に悔しいですね、チームが負けるって…」
 確かに…俺も同じことを思って頷いた。
 「すぐに練習試合したいです、予定とか決まってないんですか?」
 「来週…違うチームと試合するよ」
 「マジッすか!?すげぇ!」今度は完全に嬉しそうな顔をした。ホントは全然、予定もクソもなかったんだけど、来週やろうってフッと思ったからそう言ってみた。チーム全員がすぐに試合をしたいと思ってるはずだし。
 「あっ、ここで大丈夫です」そう言われて車を左に寄せて停車した。車を降りながらケイタは礼を言って、最後に真剣な顔で一言置いていった。
 「もう2度と負けたくないです」


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第27話 『オーナーのお仕事』

 ラプターズの監督のサトウさんに花咲球技場の借り方を教えてもらって、バイトの休みに管理事務所に行ってみた。電話での予約は出来ないみたいで、直接行って予約と同時に支払いも済ませるシステム。
 次の木曜日ならまだ空いてると言われたので、即、申し込みを済ませた。対戦相手はまだ決まってないけどなんとかなるだろう。ホントは相手を決めてから予定を合わせて申し込むのが1番良いのだろうけど、けっこう球技場の予約はいっぱいだったので、場所を確保しておくのが先決だと思った。
 次は相手探しだ。友達からの紹介みたいな感じで何チームかあてはあった。後は連絡を入れてその日に試合が可能かどうかを確認するだけ。まずは2部に所属しているチームから申し込んでみた。来週の木曜日に練習試合しませんか?ってメールで。
 返事はその日の夜に返ってきた。人数集まりそうなので喜んでってメール。意外と簡単に決まったので正直ホッとした。場所を確保したのはいいけど相手が決まらなかったらどうしようって思っていたから。
 『来週の木曜日、練習試合なり』同じメールをアズレプ全員に送った。

 準備は全て整った。あとは勝つだけだ。
 なんでまた強いチームと試合組んだんだよってアッチは嘆いたけど、強そうなチームと戦って勝ってこそ意味があるって俺は言い切った。もう1回1部のチームと試合したわけだし。もしかしたらまた負けるかもしれないけど、どことやってもその可能性はあるからね。
 ケイタは大喜びしてた。試合相手がまた強そうなチームだって知ってワクワクしたに違いない。まるでサイヤ人。
 3連敗したけど、アズレプはそれでメゲるようなチームじゃない。奇跡のチームだって信じてるから…ってよっPが言ってたから、俺もそう信じてる。
 晴れたら良いな。


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第28話 『ウサギをなめんなよ』

 初めての時ほど緊張はしなかったけど、アッチはやっぱり何度もトイレに行った。グランドの広さにもなんだかもう慣れた感がある。ちょっとだけ成長したのかもしれない。
 「どうもーよろしくお願いします」相手チームの人が現れてお互いに挨拶を交わした、まだ相手は7人ぐらいしか集まってないみたいだ。
 「ちょっと、何人か遅れそうなんで、試合始めちゃいますか?」言われて俺は意味が全く分からないって顔をした。人数が揃ってないのにどうするってんだ。
 「この広さで7対7は辛いですよ」笑ってそう言うと相手も同じように微笑んだ。
 「いや、そっちは11人で大丈夫ですよ」
 内心カチンときた。「いや、そっちが人数揃うまで待ちますよ。11対11じゃないとなんだかもったいないんで…」でも笑顔は崩さなかった。オーナーだから。
 「そうですか…じゃあ…7時半前には集まると思うんで、それからってことにしますか。何分ハーフでやります?」
 「45分ハーフで」俺はキッパリとそう答えた。

 「なめられてますね」話を聞いたアッチはカチンときた表情。
 「でも実際、俺らリーグに加盟してないからさ、遊び程度の練習試合って感じなんじゃないか」
 「じゃ、痛い目…見せてやろう…」もうアップだけで息を切らしながらよっPがそう言ったから、俺たちは笑いながら頷いた。みんな気合の入った表情。全員負けず嫌いだし、なめられるのはもっと嫌い。今はまだ勝ち星のないヒ弱なウサギだけど。
 試合までの練習はグランドを大きく使ってパスを回すことに重点を置いた。せっかく攻撃力のあるサイドなんだから、それをもっと活かそうってわけ。DFに関してはどこでボールを取るのかを再確認、リスクを冒してでも前で取る。ユアサの強気の意見にみんな賛成した。ズルズル下がって攻められ続けるのはもう嫌だ。
 7時を過ぎたぐらいで相手チームも11人揃った。揃ったから試合始めましょうって言われたけど、少しアップしてからでいいですよって返した。
 「今日ユニホームでやるの?ただの練習試合だろ?ビブスでイイじゃん、ってかユニホーム持ってきてないし」相手チームの誰かがそう言ってるのが聞こえてきた。
 「ホントなめてるな」アッチの表情にほんのりと怒りの影、俺は落ち着けよと、その背中を軽く叩いた。
 「ってかどこのチーム?別にちゃんとしたチームじゃないんだろ?」他の誰かがそう言ってるのが聞こえて、俺は相手チームの方を思いっきり睨みつけた。今度はよっPが落ち着けよと俺の肩を叩いて「ゲームで見返してやろう」と一言。
 「そうだよな…」もう真っ黒になりかけたスパイクの紐を縛り直しながら、俺はカッとなりかけた心を落ち着けた。
 相手のアップも終わって、センターサークルに並んで一礼。相手は黄色いビブス。ユニホーム姿のアズレプは、この日も円陣を組んだ。
 「なんだかナメられてるみたいだからさ、噛み付いてやろう…じゃ、アッチよろしく」
 「はい、そしたら…アズレプサイドチェンジ!!」
 「おぉぉぉ!!!」
 いつもより馬鹿でかい声を上げて、ウサギたちはそれぞれに散らばった。もう2度と負けないって気持ちは、決意に変わってた。



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第29話 『ウサギ・アラビアータ』

 気合は十分なんだけど、相変わらず立ち上がりの悪いウサギたち…、序盤から押し込まれディフェンスの時間が続く。フォーメーションは4-4-2の菱形、前回と同じ。
 開始10分で3本ものシュートを打たれた。どれも大きく枠を外れたおかげで助かったけど、いつ決められてもおかしくない状況。
 「もっと中盤でプレッシャーかけろよ!自由にやらせ過ぎなんだって!」最終ラインのユアサからの激が飛んだ。最年少ながらすでに遠慮はない。普段はアホキャラだけど、サッカーになると人が変わる。
 4本目のシュートが大きくゴールバーを越えた。
 「おいおい、いつまで遊んでんだよ、そろそろ決めとけよ」
 「ゴメンゴメン、次で決めるから許して」デカイ声で笑いながらそんな会話をする相手。
 「うるさいな…」ボソッとケイタが呟いた。かなりイライラが溜まってるみたいだ。
 ゴールキックは普段、アタルかユアサが蹴るんだけど、自分で蹴れるようにしたいってカメの要望でこの日はカメに蹴らせることにした。そのキックが笑えるぐらい飛ばなくて、正確性も皆無…おかげで序盤はホント攻められた。
 前半15分、カメの蹴ったゴールキックがコロコロと相手FWの前に転がった。
 「マジかよ!?」さすがに意表を衝かれたアタルとユアサの対応が間に合わない。外れろって心の中で思いっきり叫んだけど、ボールは無常にもゴールに吸い込まれた。
 「コレ、ハットトリックとか余裕で狙えるんじゃない?」決めたFWが戻りながらそう言った。その言葉を聞いたケイタが明らかに怒ってますって顔で俺に駆け寄ってきた。
 「タケさん、黙らせましょう」
 「黙らせよう」
 お互い丁度11人しかいなかったので審判が立てれず、ファールの判定が微妙でおとなしかったアズレプだったけど、遅れてきた相手チームの人が審判に入ってからは、やっと本来のアグレッシブさが戻ってきた。
 中盤でボールを持った相手をケイタがショルダーで吹っ飛ばす。
 「痛てぇ~なコラ!ファールだろ!」吹っ飛ばされた11番が叫んだ。笛は鳴ってない。
 「鳴ってない鳴ってない…」笛が鳴らなければケイタは止まらない。完全に相手をシカトしてボールを持ち上がる。そして逆サイドのワッタへ。ワッタはそのパスをダイレクトでタクちゃんに送った。
 前方のスペースに出されたボール、タクちゃんが相手サイドバックと競り合いながら追いかけるけど、タクちゃんのスピードに相手は全くついていけず、たまらず足を引っ掛けてタクちゃんを転ばせた。
 さすがにこれには笛が鳴る。
 「うちのタクちゃんに何してんのよ!」普段相手を削りまくってるアッチが叫んだ。チームメイトがやられると熱くなる性質。
 「はいはい、ファール、ファール」相手のDFがそう言ってますますアッチを怒らせた。俺はカチンときて、言ったDFを睨みつた。
 「熱くなんなよ、たかが練習試合だろ…」そう言って背を向けたDFと俺の間をいきなりボールが横切った。
 蹴ったのはワッタだった。相手も俺たちも反応できなかったけど、ケイタだけがソレを感じていて、ゴール前、フリーでボールを受けると、GKが飛び出す間もなくボールをゴールに蹴りこんだ。
 「汚ねぇーぞオイ!」相手のDFとFWがそう叫んだけど、審判はゴールを認める笛を鳴らした。
 ワッタは言われても、そ知らぬ顔で首を傾げてから、人差し指でこめかみの辺りをチョンチョンと叩いた。俺はソレを見て小さく笑った、ワッタらしすぎて。
 「オイ!」さっきケイタに倒された11番が、ゴールを決めて戻ってくるケイタに文句を言おうとしたけど、ケイタはいつもの笑顔で返す。
 「鳴った鳴った」
 どうやらこの2人が1番怒ってたみたいだ。



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第30話 『うさぎは黙って餅をつく』

 試合は荒れた。
 「オイ、たかが練習試合だろ!?痛てぇなコラ」相手の11番がデカイ声で騒ぎ立てる。ちょっと当っただけですぐ文句。DFの奴らもそうだけど、このチームは削ってくるくせに自分たちがヤラれると些細なことでも声を荒げて喚き散らす。でも審判をしてる人はなんだか冷静に捌いてくれる。
 左サイドでワッタが倒されて笛。さっきからワッタは何度も削られ、倒されてる。それでも文句を言わない。代わりにアッチが何度も叫んでた。
 声に出して文句を言わない代わりに、ワッタはプレーで怒りを表す。前半21分、左サイドでボールを受けると、目の前で抜かれないように…何度もワッタにやられてるので細心の注意で距離をとった相手に対して、人差し指をヒョイヒョイとする仕草で、取りに来いよと挑発、その挑発にイラッとした相手が猛然と距離をつめると、嘲笑うかのようにその股間を抜いて抜き去った。アズレプの11番はクールだ。
 フリーになったワッタからパスが出る。そのパスを受けたよっPは、DFを背負ったままボールをキープ。腕を上手く使って相手を止めて、2列目が上がるための時間を作る。ぎこちない足元ながら練習通り良くやってる。
 「よっP!」声をかけて走りこむと、追い抜くタイミングでよっPからパスが出た。俺はそのボールを足元にコントロールしてすぐに右サイドのケイタへ。ワンタッチ目がやや大きくなって角度がなくなったけど、ケイタは迷うことなく右足を振りぬいた。
 ケイタのシュートは無回転で重たいから嫌だってカメが言ってた。微妙に揺れながら飛んでくるらしい。相手GKは今まさにそれを体感して、なんとか片手で弾いて逃れこそしたけど、10番に打たせるなってDF陣に怒りの声を上げている。
 「何で決めれないかな今の…」ケイタは自分自身にため息をついた。
 「ナイスシュート、遠目からでもドンドン狙ってけ」
 得点こそ奪えなかったけど、アズレプの攻撃はいつも以上に機能していた。そして、それ以上にディフェンスの調子が良い。先制点こそ不本意な形で許したものの、その後は崩されることなく良く守ってる。何本かのシュートもカメがキッチリとセーブした。
 
 「決めれるトコロで決めないとダメですよね…すいません…」ハーフタイム、外したシュートを悔やんでケイタはそう謝ったけど、みんな笑ってケイタを励ました。
 「あいつらガツガツ削ってくるくせに、ちょっとこっちが当ると文句言ってきてうるさいんですよね」ユアサが言った。
 「ミスってもへらへら笑ってるし、なめてますよあいつら」ケンがそれに続いた。
 「なに言われても気にするな、サッカーでぶっ倒そう」俺の言葉にユアサもケンも頷いた。喧嘩したって意味がない。サッカーで勝てばいい。相手チームはこっちのプレーが汚いだとか、フェアじゃないだとかデカイ声で話していたけど、そんなことにかまう必要はない。
 「タケさん、もっと上がってみてもいいですか?」そう言ったのはマッチョだった。何気に最近のマッチョは1対1で簡単に抜かれることなく安定した守りを見せている。俺はガンガン上がってみろって返した。
 「今までの相手に比べて、マッチョのサイドの奴は全然たいしたことない感じするし、タイミングみて上がってみな」アッチもそれに賛成した。そこから俺たちは後半どう攻めるか、どう守るか、みんなで意見を出し合った。相手への文句なんて忘れて、自分たちがどうするかってことを真剣に話し合った。
 アズレプはサッカーで勝負する。



★後半戦、ウサギの大暴れに御期待下さい★
☆アズレプは日本代表を応援します☆

 
 
 
 

第31話 『その勢いは止まらない』

 いつもならスタミナ切れで足が止まり、後半はやられまくるのがアズレプの悪しきパターン。けどこの日のウサギたちは後半も元気に飛び跳ね続けた。
 後半12分、右サイドでケイタが粘ってコーナーキックをゲット、蹴るのはタクちゃん。
 「ケン上がれ!」上背のあるケンを上げてヘディングで勝負させる。足元は微妙だけどヘディングはけっこう上手い。ケンは喜んでゴール前に上がってくる。
 タクちゃんのコーナーキックは鋭く弧を描いて、正確にケンのトコロに飛んでいった。ケンは練習で習ったとおりにそのボールを地面に思いっきり叩きつける。完璧なタイミングだったけど、ボールはDFの膝に当ってペナルティエリアの外まで弾かれた。
 力なく転がるボールに猛然と走りこむアタル。
 「撃て!!」誰かが叫んだ。言われるまでもなくアタルはもう撃つ気マンマンの構え。中央、ペナルティエリアの外から思いっきりシュートを放った。
 ボールが風を切る音が聞こえた。一直線にゴールを捉えたボールはGKに反応すらさせず、そのままネットを揺さぶった。
 「うぉぉぉぉぉ!俺スゲェ!俺スゴくない?」大喜びでユアサに駆け寄ってアタルが騒ぎ立てた。すぐにみんなが歓喜の輪を作る。相手チームは呆然として立ち竦んでいた。
 「キャノンシュート、キャノン、俺の右足キャノンだよ!」初めてのゴールにアタルの興奮は止まらない。その頭をみんながバシバシと叩く、殴る。嬉しくて。
 「最高っすよアタルさん、後は切り替えてしっかり守りましょう。まだまだ点取れますよ、まずはディフェンスからです」ユアサはあくまで冷静だった。でもいつもより嬉しそうだ。
 なおもアズレプは攻める。前線からプレッシャーをかけて相手のミスを誘発して中盤でボールを奪う。DFラインは強気にラインを上げて前で戦う姿勢を崩さない。
 「イテェなコラ!ファールだろ!」しつこくボールを奪いにいった俺に向って相手DFが文句を言った。審判はファールの笛、後ろから少し削ったからファールを取られても仕方ない。俺はゴメンなって謝った。
 「痛いんだよテメェ、ふざけんな…」ファールに対して謝った俺に、相手はまだ文句を続けた。
 「…あぁ?テメェって誰にいってんのよ?」振り返って思いっきり睨みながらそう言うと、いきなりの変化に相手は驚いて身をすくめた。
 「落ち着けタケ、キレるなって。ただでさえ怖い顔してんだからタケは…」
 「ウソ!?俺の顔怖い?」
 「グレイのカラコンに金髪、ピアスにヒゲだよ、ただでさえ外人顔なのに…見慣れてないと怖いって…」よっPに笑わされて俺の怒りはどっか飛んでった。
 「サッカーで…だろ?オーナー」
 「だよな…Y・O・P・P・Y」
 それから5分も経たないうちに、強引にボールを奪われたタクちゃんが、相手を後ろからスライディングでブッ倒した。一瞬また険悪な空気になったけど、タクちゃんがすぐ相手に手を差し伸べて謝ったからなんとか大事には至らなかった。
 「タクちゃんでも怒ることあるんだな…」俺とよっPは目を見合わせて笑った。
 後半22分、ワッタがドリブルで持ち上がると、左サイドに開いていたタクちゃんが中央に走りこむ。相手もアズレプもそこにパスが出ると思った瞬間、ワッタは空いた左サイドのスペースにボールを流した。
 絶妙のタイミングでオーバーラップしてきたマッチョがそのボールを受けてサイドを駆け上がる。DFが慌てて追いかけると、センターでタクちゃんがどフリーに。マッチョはそれを見逃さず、切り替えしてから右足でタクちゃんにパス。タクちゃんはシュートフェイントからのループシュートでGKを完全に翻弄した。
 これで3-1。でもまだウサギは止まらない。



★アズレプに応援のコメント大歓迎です★
 
 
 
 

第32話 『歓喜の輪』

 相手チームからヘラヘラとした余裕の笑みが消えた。格下だと思っていたチームに2点差をつけられて、必死の形相で逆襲に出る。だが、流れは変わらない。
 後半31分、アッチがボールを奪い、ケイタ、俺とつないで最後はまたもタクちゃん、ダメ押しの4点目。その1点が相手のモチベーションを完全に奪った。さらに終了間際、ユアサの直接FKが決まり5-1。
 鳴り響く終了の笛、集まったウサギたちは大喜びで歓喜の輪を作る。遅れてカメもその輪に加わった。圧勝での初勝利。ホントに嬉しくてしょうがなかった。
 「ありがとうございました」整列して礼をしながらも、喜びは抑えきれない。
 「強いね~、良いチームだし。今度うちとも試合しようよ」審判をやっていた人がそう言って握手を求めてきた。
 「ここのチームじゃないんですか?」そういえば遅れてきたこの人は審判をずっとやってくれて、試合には出てこなかった。
 「友達がいるから観に来ただけで、なんかモメそうだから審判したんだよね」そう言って笑った。上手く捌いてくれたから良かったけど、審判なしじゃもっとモメていたかもしれない。
 「そうなんですか、ありがとうございます。是非、機会があれば練習試合したいですね」そう言って握手をし、連絡先を交換した。
 アズレプベンチは大盛り上がりで興奮状態。アタルはしきりにキャノンだキャノンだとガキみたいに騒いで、ユアサとケンがそれを誉めて調子にのせる。
 「ってかマッチョのパス最高だったな、良くあそこで切り替えしたな」俺が誉めるとマッチョは恥ずかしそうな顔をした。
 「実はアレなんですよ…左足で蹴れないんで切り替えしたんですよ。切り替えしたけど、ロングボールも蹴れないんで…なにも考えずに中に蹴ったらタクちゃんがいたって感じなんですよね」
 「マジかよ」それを聞いてみんな大笑い。冷静な判断だと思ったら実はテンパってたなんて、マッチョらしい。
 「でも最高のパスでしたよ」ケイタにそう誉められてマッチョは嬉しそうに笑った。
 荒れた試合ではあったけど、とにかく初勝利は最高だった。
 「このままの勢いでもう1回ラプターズと試合したいですね」アッチの言葉にみんながみんな賛成の声。もうすぐ冬が来る、そのまえに借りは返さないとならない。
 「ラプターズの前に借りを返さないといけない相手がいるだろ?」俺が言うとケイタだけが気が付いてニコッと笑った。
 5-1の勝利は、1-5の敗戦を思い出させた。ファンタジスタに挑戦状…さぁ、ウサギの逆襲だ。



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第33話 『真夜中の決闘』

 ファンタジスタは快く試合の申し込みを受けてくれた。向こうとしてもそろそろ試合がしたかったらしいので丁度良かったみたいだ。ただ、花咲のナイターが予約できなかったので、他の場所を探さなくてはならなくなった。
 「夜じゃなくて昼間に試合してみたい」、「芝のグランドでサッカーしたい」なんてみんなが言うので、せっかくだからと思い、俺は当麻のグランド、日曜日の昼間で予約を入れてみた。相手は学生主体だからそれで日程的には大丈夫。冬の繁忙期前だから、アズレプのフリーターたちも事前に交渉しておけば休みを取れるだろう。何気にオーナーの仕事にも慣れてきた。

 試合が決まって、ある日の夜、俺はケイタとケンを呼び出した。誰が1番強いか、それを決めるために。
 ケンは気合の入った表情で現れた。自分が絶対1番強いと言い張っただけに、負けるわけにはいかないって表情。対してケイタは余裕の笑みを浮かべていた。そこには絶対の自信が見て取れる。
 「誰が1番強いか決めようじゃないか…」
 何の話かっていうとウィニングイレブンの話だ。前からウィイレ8で誰が1番強いかって話をしていてね、じゃ、実際やって決着をつけようってことになったわけ。こっちはファミコンの初代サッカーからサッカーゲームをやってんだ、高校生に負けるわけにはいかない。
 「ケイタはマジで強そうだから、最初ケンと俺で勝負しようぜ」
 「いいですよ、やりましょう」
 第1試合はケンのミランVS俺のインテル、ミラノダービーだ。
 「ウソ!?またオフサイドって!?」
 ケンのシェフチェンコは俺の仕掛けるオフサイドトラップにハマリまくった。ケンの攻めはカカかピルロにボールが渡ると絶対にスルーパスを狙ってくるので読み易い。サイドから攻めるのが下手だし。
 アドリアーノ、ビエリ、レコバが決めて3-0の圧勝。
 「いや~、シェフチェンコが調子悪いです…」1点も取れずにケンはヘコんでそう言った。
 続いて第2戦はケンのミランVSケイタのレアル。
 「ケイタには負けませんよ」そう言って挑んだケンだったけど、ロナウドに3点、ベッカムのFKで1点、ラウールにも入れられて5-0で大敗した。サイド攻撃を多用するケイタの攻撃にヤラッれぱなし。
 「自分、もうアレです…雑魚です」ケンはどん底までヘコんだ。
 「じゃあ、最強を決めるか…」そう言ってケイタと俺で勝負することになったけど、正直ケイタに勝てる気はしなかった。ケイタは余裕の顔だし。
 インテルVSレアル。中盤をジダンとフィーゴ、ベッカムで作ってくるケイタだったけど、絶好調のMYダービッツがことごとくその攻撃を阻止した。
 「なんか、そいつ邪魔ですね…」
 「俺のダービッツは最高に…あっ!?」言いかけたところでベッカムが思いっきり後ろからダービッツにスライディング。ベッカムにはイエローカード、ダービッツは担架でピッチの外に運ばれていった。
 「よし、イエローならOKです。これで邪魔者は消えました」そう言ってケイタはニヤリと笑った。なんて奴だ…ゲームになると完全に性格が変わりやがる。
 ダービッツは怪我、仕方なく俺はカンビアッソと交代させた。ケイタはフィーゴが大好きらしく、右サイドからガンガン攻めてくる。でも俺のファバッリも負けてない。
 先制点はアドリアーノ。ベロンからスタンコビッチ、ビエリとつないでシュート、GKが弾いたボールを押し込んだ。
 「カシージャスなにやってんだよ…キャッチしろよ…」先に点を決められてケイタはボソッと愚痴をこぼした。
 後半に入って、ベッカムのCKからロナウドが頭で合わせて同点。サイドをエグッたフィーゴのクロスをラウールが決めて逆転された。さすがにケイタは強い。だけど終了間際、試しにレコバでCKから直接狙ってみると、ボールはバーに当ってゴールに吸い込まれた。
 「スゲェ!?狙ったんですか今の!?スゲェ…」このゴールにはケイタも驚いて声を上げた。確かに狙いはしたけど、まさか入るとは思わなかった。
 そしてロスタイム。FKをチップキックでベロンが軽く蹴ったボール、アドリアーノが後頭部で強烈なヘディングを決めてインテルが3-2で競り勝った。
 「今のヘディングは有り得ないですよ!ないですよあんなの…」気味の悪いヘディングで敗れて、ケイタは思いっきり不機嫌になった。
 いつのまにかベッドではケンが寝息を立てて、時間は朝の5時。俺とケイタはもう何時間もずっとゲームの虜。ミラノダービー、イタリアダービー、マンチェスターダービー、ロンドンダービー、何試合ぐらいしたんだろう?レアルVSインテルだけでも5試合ぐらいやった気がする。
 「よし、そろそろ終わるか?」
 「あと1試合やりましょう!」ケイタの負けでは終われない。かといって俺も負けで終わるのは嫌だから、延々と勝負は続く。
 けっきょく朝の7時ぐらいまで2人でゲームをし続けた。トータルの勝敗はよく憶えてないけど、最後の試合は同点、PK戦でケイタが勝った。ホントは勝って終わりたかったけど…
 負けず嫌いで初めて負けた。




★そんなアズレプですが応援よろしくです★

第34話 『心地よい雨』

 朝から小雨が降ったり止んだり、でも不思議と空は晴れていた。
 久しぶりの当麻グランド、あいかわらず所々剥げた芝。雨に濡れ、太陽の光を浴びてキラキラと光って見えた。俺が着いた時にはすでにみんな集合していた。どうやら遅れをとったみたいだ。
 「遅いよオーナー」アッチは気合十分といった感じで遅れてきた俺を急かした。今すぐにでも試合したいって、そんな顔。
 反対側のベンチには、あのオレンジ色のユニホームたち。軽く挨拶をしに歩み寄る。
 「久しぶりだね、ちょっと天気が微妙だから、怪我しないように気をつけようね」
 「そうですね、グランドけっこうグチャグチャみたいなんで…気をつけましょう」
 いつものように試合形式の打ち合わせ。今回は時間に余裕があるので、1時間アップをしてから試合開始ってことにした。もちろん45分ハーフだ。前回は大敗したけど、今回は11対11、絶対負けない気持ちで握手を交わした。
 1時間のアップの中で、俺たちはグランドの感触を確認しながらパスを回したりフォーメーションの練習をした。初めての芝、しかも雨なので良く滑るし良く伸びる。みんなトラップやドリブルに苦戦してた。とくにGKのカメは予想外のバウンドに悪戦苦闘。
 「遠くからでもガンガンシュート狙ったら入りそうですね」シュート練習で、ケイタはそう言ってわざとカメの手前でバウンドするようなシュートを撃った。跳ねずに伸びるボール、カメは前に弾くのがやっと。
 「シュート撃たれたらやばいな…」
 心地よい程度の雨だけど、どうやら試合には悪い影響を及ぼしそうだ。

 「前回は1-5でボロ負けしてるけど、あの頃とは違うっての見せてやろうぜ…アズレプ、サイドチェンジ!!」
 「おぉぉぉぉ!!」開始前の円陣もなんだか様になってきた気がする。それぞれのポジションに散らばるウサギたち。そして雨の中、試合は始まった。
 序盤はほぼ互角の展開。リーグに加盟してるチームと今まで何度か試合をしてきて分かったんだけど、このファンタジスタってチームは、比べても遜色ないぐらいに強い。高校生中心なだけに良く動くし、チームとしてもまとまってる。
 ファンタジスタはアズレプの両サイドの裏を狙って攻めてきた。前回はそれでトコトンやられている。けど、今のアズレプは前とは違う、マッチョもケンも簡単には裏を取らせないし、ユアサとアタルのフォローも早い。中盤はアッチを中心にワッタとケイタが動き回って自由にパスを出させない。思うように試合を作れずにファンタジスタは戸惑っていた。
 「タクさん!!」ケイタからのロングボール、左に開いていたタクちゃんが前のスペースで勝負する。完全にワンステップ目でマークを置き去りにしたけど、水溜りで跳ねたボールは勢い良くサイドラインを割って飛び出してしまった。良いパスだったと手を叩くタクちゃん。
 「予想以上に伸びるな…」ケイタはまだ感覚を掴めずにそう呟いた。
 最初のチャンスはファンタジスタにおとずれた。グランドに足を取られたアタルが痛恨のクリアミス、拾った相手14番がフリーでシュート!
 完全にヤラれたって思った。けどそのシュートをGKカメが奇跡のファインセーブ、大きく伸ばした右手でゴールの外に弾き出した。
 「スゲェ反応良くなったなあのキーパー…」相手のDFがボソッとこぼした言葉を聞いて、俺はなんだか嬉しくてしょうがなかった。もうあのカメは震えない。
 相手のCK、カメは無理にキャッチしようとはせず、パンチングでボールを前に叩き出した。
 「ディフェンス、ライン上げよう」ボールをワッタが拾うと同時にアタルの声がかかり、DFがラインを押し上げる。ワッタはそのボールをドリブルでキープ、雨のグランドでも踊るようなステップで相手を翻弄する。左にポジションをとったタクちゃんを見ながら、ワッタは右サイドのケイタにアウトサイドでボールを送った。ロナウジーニョばりのノールック。ボールを受けたケイタがダイレクトでよっPにパス、そのパスをよっPは前に流すフェイントから、右足の踵に軽く当てて左前方のスペースに…
 前半14分、そのボールに走りこんだ俺が中央を突破して、ボールをゴール右隅に蹴りこんだ。びしょ濡れのウサギたちが大喜びで歓喜の声。最高のパスを送ったよっPが俺に抱きついた。
 「なんだよ今のパス?練習でも見たことないよ。最高じゃん!」
 「奇跡的に成功した!自分でもビックリだ!」
 心地よい雨の中、歓喜の輪。宿敵相手の先制点。



 

第35話 『サッカーボールで虹を描く』

 サッカーボールで虹を描く。何だソレって思うかもしれないけど、アズレプの面々は知っている。だって1度見たことがあるから。

 「ミッド戻れ!ディフェンス!」アッチの激が飛んだ。攻めに集中しすぎた中盤を修正する。ワッタとケイタが上がりすぎて真ん中にポカンと空いたスペース。相手はそこからゲームを組み立ててくる。
 ファンタジスタの中盤は2枚のオフェンシブがゲームを作るボックススタイル。ワンボランチのアッチ1人では止めきれない。
 真ん中から左サイド、そこから大きくサイドチェンジ、見事な展開にアズレプの守備陣が綺麗に崩された。
 前半31分、抜け出した相手11番がGKカメを引きずり出してから中央にマイナスの折り返し、それを14番がなんなく決めて同点。
 「ディフェンスからだろ!前からプレッシャーかけろ!!」今度はアタルがデカイ声で叫んだ。
 泥だらけになりながら、ウサギたちは必死にボールを追い掛け回した。ファンタジスタも同じように泥だらけで、なんだか22人で泥遊びしてるみたいだ。
 前半終わって1-1。ぬかるんだグランドのせいか、いつもの倍ぐらい疲れた感じがした。

 「絶対勝ちましょう、キツくても動かないとやられますよ!」1番疲れているだろうアッチの言葉に、みんなが真剣な顔で頷いた。
 「もう負けたくないです…絶対…」頬の泥を拭いながら、ケイタがそう言った。
 後半開始前に、俺たちはもう1度円陣を組んだ。
 「止まったら負けるぞ、最後まで追いかけろ、絶対勝つぞアズレプ!」強くなった雨足の中、ウサギたちの咆哮が鳴り響いた。
 疲れているのはお互い様のようで、ファンタジスタの足も止まり始めた。さすがに高校生とはいえこのコンディションじゃ仕方ない。
 濡れたグランドのせいもありお互いにミスを連発、フィニッシュの精度も欠いて試合は硬直状態。
 後半21分、相手のミドルシュートがイレギュラー、完全に逆を衝かれたカメだったが、なんとか伸ばした右足に当り、ボールはゴールポストに当って跳ね返った。慌ててこぼれたボールに飛びつくカメ、しっかりと腕におさめるて、ホッとした表情。最初の頃から1番成長したのは、このノロマなカメかもしれない。
 疲労で思うように動けない。左サイドでケイタからパスを受け、足元にボールをおさめると、2枚のディフェンスが目の前にいた。相手も肩で息をしていて苦しそう、もう走りたくないって顔をしてる。
 「縦勝負、勝負しろ!」アッチから無理な注文が飛んできた。けど応えなきゃならない。
 「よーいドンだ…」スラムダンクのマネをして、俺はボールをスペースに蹴りだすと、2枚のディフェンスの間を割って全速力で走り出した。走るって決めた俺と走らされるディフェンスとでは覚悟が違う。二枚を置き去りに俺は左サイドを駆け抜けた。
 あんまり得意ではない左足でのセンタリング。ボールはにニアサイドのよっPを越えて右サイドに流れていった。ラインを割りかけたボール、誰もがゴールキックだと思ったけど、アズレプの20番は諦めなかった。ギリギリのところでボールに追いつくと、すぐにゴールの方を向いて狙いを定める。だが角度はない。焦って戻ってきたDFをワンフェイントでいなす。
 「タクちゃん!」疲れた体を引きずって俺はファーサイドに走りこんだ。絶対にセンタリングがくると信じて。
 スローモーションみたいに、その左足から蹴り出されたボールの軌道がハッキリと見えた。ゆっくりと回転しながら、綺麗な虹を描いて、そのボールは静かにサイドネットを揺らした。
 21人の傍観者が唖然とする中、タクちゃんが右手の拳を突き上げて静寂を吹き飛ばす咆哮を上げた。
 「うぉぉぉ!スゲェ!」10人全員が飛びついてタクちゃんを揉みくちゃにした。タクちゃんは照れながらそれに応える。信じられないくらい綺麗だった。
 忘れられない魔法のゴール。




★次回、アズレプ最終話です!!★
 
 

 

最終話 『ウサギは冬眠するの?』

 舞い降りた白い雪がうっすらと街を包んで、あの公園もグランドも、なんだか違う景色に。いつものように車に乗り込んで、俺は車を走らせた。
 北海道の冬は急いで訪れる。全てが雪に埋もれて凍てつくような寒さに身を震わせる季節。助手席のバックの中で携帯が鳴った。ブルーハーツのロクデナシはよっPからの着信だ。
 あの雨の試合を勝利で飾り、その後アズレプは最後の試合、ラプターズ戦に挑んだ。連勝の勢いに乗って、肌寒いなかでの最終戦。
 「もしもし、場所どこか分からないんだけど…」
 「1番線のイレブン分かる?あそこで待ち合わせしよ」
 道路にも雪が薄く積もってた。煙草を吸おうと窓を開けると冷たい空気が車内にドッと流れ込んでくる。それが意外と好きだったりする。
 負けたくないって気持ちは最後まで失わなかったけど、試合終了の笛を聞いたアズレプに喜びの笑顔はなかった。最後まで諦めずに戦った。それでも勝てるとは限らない、それがサッカー。
 俺たちの夏は終わった。気が付くと秋なんて知らないうちに通り過ぎていたみたい。
 「じゃぁ、後で」そう言って電話を切った。後部座席にはひと回り小さなフットサルのボール。カバンの中にはあのユニホーム。
 ウサギは冬眠するの?
 青いウサギは眠らない…



★アズレプの夏が終わりました…★
☆応援していただいたみなさんに感謝です☆



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K・J・TAKE

Author:K・J・TAKE
実話から生まれた物語。
色んな奴らが集まって誕生したサッカーチーム『アズレプ』の愛と感動?の日々。

初小説ですけど頑張って書いていこうと思います!
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第1話『退屈』へGO!!

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