2005-10

第28話 『ウサギをなめんなよ』

 初めての時ほど緊張はしなかったけど、アッチはやっぱり何度もトイレに行った。グランドの広さにもなんだかもう慣れた感がある。ちょっとだけ成長したのかもしれない。
 「どうもーよろしくお願いします」相手チームの人が現れてお互いに挨拶を交わした、まだ相手は7人ぐらいしか集まってないみたいだ。
 「ちょっと、何人か遅れそうなんで、試合始めちゃいますか?」言われて俺は意味が全く分からないって顔をした。人数が揃ってないのにどうするってんだ。
 「この広さで7対7は辛いですよ」笑ってそう言うと相手も同じように微笑んだ。
 「いや、そっちは11人で大丈夫ですよ」
 内心カチンときた。「いや、そっちが人数揃うまで待ちますよ。11対11じゃないとなんだかもったいないんで…」でも笑顔は崩さなかった。オーナーだから。
 「そうですか…じゃあ…7時半前には集まると思うんで、それからってことにしますか。何分ハーフでやります?」
 「45分ハーフで」俺はキッパリとそう答えた。

 「なめられてますね」話を聞いたアッチはカチンときた表情。
 「でも実際、俺らリーグに加盟してないからさ、遊び程度の練習試合って感じなんじゃないか」
 「じゃ、痛い目…見せてやろう…」もうアップだけで息を切らしながらよっPがそう言ったから、俺たちは笑いながら頷いた。みんな気合の入った表情。全員負けず嫌いだし、なめられるのはもっと嫌い。今はまだ勝ち星のないヒ弱なウサギだけど。
 試合までの練習はグランドを大きく使ってパスを回すことに重点を置いた。せっかく攻撃力のあるサイドなんだから、それをもっと活かそうってわけ。DFに関してはどこでボールを取るのかを再確認、リスクを冒してでも前で取る。ユアサの強気の意見にみんな賛成した。ズルズル下がって攻められ続けるのはもう嫌だ。
 7時を過ぎたぐらいで相手チームも11人揃った。揃ったから試合始めましょうって言われたけど、少しアップしてからでいいですよって返した。
 「今日ユニホームでやるの?ただの練習試合だろ?ビブスでイイじゃん、ってかユニホーム持ってきてないし」相手チームの誰かがそう言ってるのが聞こえてきた。
 「ホントなめてるな」アッチの表情にほんのりと怒りの影、俺は落ち着けよと、その背中を軽く叩いた。
 「ってかどこのチーム?別にちゃんとしたチームじゃないんだろ?」他の誰かがそう言ってるのが聞こえて、俺は相手チームの方を思いっきり睨みつけた。今度はよっPが落ち着けよと俺の肩を叩いて「ゲームで見返してやろう」と一言。
 「そうだよな…」もう真っ黒になりかけたスパイクの紐を縛り直しながら、俺はカッとなりかけた心を落ち着けた。
 相手のアップも終わって、センターサークルに並んで一礼。相手は黄色いビブス。ユニホーム姿のアズレプは、この日も円陣を組んだ。
 「なんだかナメられてるみたいだからさ、噛み付いてやろう…じゃ、アッチよろしく」
 「はい、そしたら…アズレプサイドチェンジ!!」
 「おぉぉぉ!!!」
 いつもより馬鹿でかい声を上げて、ウサギたちはそれぞれに散らばった。もう2度と負けないって気持ちは、決意に変わってた。



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Author:K・J・TAKE
実話から生まれた物語。
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