2017-09

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第9話 『紙の上のフィールド』

 夜のバーガーショップで3杯目のコーヒー。テーブルの上には書き殴られては丸められた紙の山とボールペン。アッチと2人でバイトが終わってからずっとサッカーの話で盛り上がってた。
 「最初は5バックにして失点抑えた方が絶対良いですよ」
 「5バックはやりすぎだろ、攻めないとサッカーじゃないって」
 チームのフォーメーションを考えてたんだけど、DF出身のアッチとFWの俺とでは全然意見が違う。何度も店員さんにもらったメモ用紙にシステムを書いては議論。けっこう2人とも熱くなってた。俺は取られても取り返す殴り合い的戦術が好きなんだけどね、アッチが好むのは失点を抑えてまずは引き分けでも良いから負けないサッカー。
 こないだお店で接客について仲良くなった男の子に、その子は草サッカーみたいな感じでチーム作ってやってるらしいんだけど、そのうち練習試合でもしようよって携帯教えたら速攻で電話がきて、じゃあ来週にでもお願いしますってことになった。だから慌ててフォーメーションなんかの話し合いってわけ。
 「ってかホントいきなりすぎますよ」アッチは同じセリフをもう十回ぐらい言ってる。
 「決まったものは仕方ないじゃん」俺は毎回同じ返答。
 サッカー経験者だし、一番背がデッカイから、俺はアッチをキャプテンに任命した。キャプテンってなんか大きいとイイじゃんね、俺はちっちゃいから。本人は嫌がってたけど、実際はまんざらでもないはず。言われたその日にキャプテンマーク選んでたし。
 「でも、とりあえず人数が足りてないですよね…」
 「ケイタが後輩連れてくるって言ってたけど、ワッタが来れないからな…グランド狭いし、10対10でやるしかないね」
 人数の問題はケイタが後輩を誘ってくれたおかげで解決しかけたんだけど、ワッタがバイトで来れないので、また振り出しに戻った。飲食店のバイトで土曜日に休みをもらうのは難しい。
 「相手のチームって強いんですか?」
 「なんか、部活でやってない高校生の集まりみたいな感じらしいよ」
 「意外と上手い奴とかいそうですよね」
 なんだかんだ議論しながらも、そうやって話してるのが楽しくてしょうがなかった。結局、フォーメーションは試合の日の気分で決めようってことになったんだけど。何のために長いこと話し合ったんだか…
 「やるからには絶対勝ちましょう!絶対強いですようちのチーム!」
 気持ちは一緒。絶対に負けたくない。根拠の無い自信みたいなモノもあったし、やるからにはやっぱりね、勝たないと。
 試合が決まったって聞いてみんなのテンションも上がりっぱなし。そしてついにアズレプは初めての試合に臨む。



★初試合に臨むアズレプに応援のワンクリックを~★

 
 

第10話 『怯えるウサギと震えるカメ』

 相手チームのナイキ製、オランダ代表もどきのオレンジ色したユニフォームに比べて、同じナイキ製だけど、俺たちの緑色のビブスはなんだか滑稽に思えた。結婚式にTシャツで挑む気分。
 初めての試合にみんなの表情は硬かった。よっPやケン、マサやマッチョなんかにとっては人生で初めてのサッカーの試合だから無理も無いんだけど。
 「たいしたことないですよ、絶対勝てますって」ケイタの連れてきた後輩、ユアサはそう言って怯えるウサギたちを勇気づけた。ついこないだまで現役だっただけに頼もしい。まだ高校2年生なんだけど、部活は監督と喧嘩して辞めたらしい。イタズラ好きの小学生みたいな奴。
 100均で買ってきたホワイトボードを使ってフォーメーションをみんなに説明する。最初はアッチの意見を尊重して守備的な布陣で臨むことにした。
 GKマサ。サイドバックは右にケン、左にマッチョ。センターバックはアタルとユアサ。ボランチはダブルボランチでアッチとケイタ。右のMFに俺、左にタクちゃん。ワントップがよっP。10人でやるので4-4-1のシステム。
 相手チームは審判を一人出してもまだ余るぐらいの人数。アズレプはギリギリ。買ってきたキャンプ用の簡易ベンチの上には荷物だけ。
 「そろそろ、やりましょう!」お互いに軽いアップを済ませて、ついにアズレプ初の練習試合が始まった。

 前半開始3分、多分みんな頭の中は真っ白。右、左に振られてからセンターへ、相手チームの14番のシュートは当りそこなってコロコロとGKマサの前へ。
 「オーケー」そう言ってマサは余裕でボールを掴んだかに見えた。だがボールはマサの股をぬけてそのままゴールまで…いきなりの失点。トンネル。
 「ウソだろ…」きっと誰もがそう思った。
 一方的な試合になった。上がりすぎてる両サイドバックの裏をガンガン狙われ、センターバックが引きずり出される。ボランチのアッチはDFラインに吸収されるぐらい下がり目で、元々サイドハーフのケイタは右に開きすぎ、ポッカリ空いた中盤を相手に完全に支配されてしまった。
 なんとかそれでもアタルとユアサが頑張っていたんだけど、前半10分、今度は完璧にサイドを崩されて失点。続く13分にも中央からのミドルシュートで追加点を取られた。
 そして前半21分、フワフワと飛んできたボールをキャッチしようとしたマサが、それを後ろに逸らしてしまい…4点目。
 こんなはずじゃなかった。攻撃もパスが上手くつながらずに形にならない。まだ一回しか揃って練習したことがないだけに連携もクソもない。
 30分ハーフの前半が終わって、スコアは0-4。座り込んだウサギたちは汗でずぶ濡れ。なかでもGKのマサが一番疲れた顔をしていた。誰もミスを責めることはしなかったんだけど。
 「兄ちゃん、なにカメみたいに縮こまってるの!?完全にカメじゃん!」弟のケンだけは遠慮なくマサのミスをからかった。多分、ケンに言われるのがマサには一番堪えるだろう。
 「このままじゃヤバイぞ、どうする?」俺の言葉にアッチはホワイトボードを取り出してポジションの修正。
 「攻めましょう!このままじゃヤラれるだけです」考え込むアッチにケイタがそう言った。確かにもう攻めるしかない。
 ボランチをアッチ一枚にして、ケイタを右サイドに、俺がトップに上がることにした。4-3-2、攻めの枚数を増やすしか方法はなかった。
 このままじゃ終われない。



★後半戦に臨むアズレプに愛のワンクリックを…★
 
 

第11話 『後半』

 「サイドバック上がりすぎ!もっと下がって!」ファールギリギリのスライディングでボールを奪ったユアサが大声で叫んだ。それでもマッチョとケンは、どうしても相手につられてポジションを前にとってしまう。
 中盤でボールが落ち着かず、クリアしてはまたボールを拾われて攻められる。完全に悪循環だった。何度も相手にシュートを許すが、ケンの一言で死に物狂いになったマサが、不恰好ながらなんとか、お手玉したり後ろに逸らしたりしながらも防いでくれてるおかげで失点こそ免れているが、それでも追加点を許すのは時間の問題。
 「上がりすぎだって!下がれ!!」ユアサがまた叫んだ瞬間、相手センターハーフからマッチョの裏のスペースにパスが出された。完全に裏を取られた。だが、そのボールを全速力で戻ってきたタクちゃんが奪取した。
 「ナイスカバー!」今度はアタルが叫んだ。
 ボールをキープして前を向いたタクちゃんはそのまま左サイドをドリブルで駆け上がる。長い手足を活かした大き目のストライド、ワンフェイントで簡単に相手を置き去りにしていく。
 逆サイドでフリーのケイタが手を上げてボールを要求したが、タクちゃんは止まらない。個人技だけで左サイドを深くまでエグッてからセンタリングを上げた。
 絶妙のタイミングで上げられたボールは中央で待つよっPへ。苦手ながらなんとかヘディングで競り合うよっP。
 よっPの頭に当ったボールはゴールには向かわず横にこぼれた。丁度走りこんでいた俺の目の前。左45度、最も得意な位置。俺は迷わず右足を振りぬいた。
 無回転で放たれたボールは、GKの上を越えてから急激に落ちてゴールに吸い込まれた。昔から何度も練習してるシュートだった。
 「ナイスシュート!」駆け寄ってきたよっPが飛びついて喜んだ。
 「イケるイケる、あと3点取るぞ!」アッチが叫んだ。
 「あと4点です」アッチの言葉にケイタがボソッと返す。
 その1点でアズレプは息を吹き返した。必死で守っては取り返したボールをなんとかしてタクちゃんにあずける。タクちゃんは何度も左サイドを駆け上がってはチャンスを作る。そのプレーがみんなを勇気付けた。
 だが、その後また1点を奪われ、惜しい場面は何度かあったものの、加点できぬまま試合は終了した。
 1-5、完敗だった。



★残念ながら負けてしまったアズレプに応援のワンクリック★
 
 

第12話 『顔を上げて前を向く』

 泣きそうなぐらい悔しかった。
 試合終了後に相手チームのトコに行って、キャプテンのミヤタ君に挨拶。近いうちにまた試合をしましょうと再戦の約束をして握手を交わした。ファンタジスタは良いチームだった。試合中は激しいプレーで熱くなったりもしたけど、試合が終わればキチンと挨拶もしてくれたし、サッカーが好きな奴らの集まりって感じ。ホントにまたこのチームと試合したいなって心からそう思った。
 アズレプの面々はそれぞれに悔しそうな顔、何とも言えない重たい空気に包まれていた。初めての試合とはいえ、1-5の惨敗。
 「お疲れ…」何か言おうと思ったんだけど、それしか言えなかった。
 「もっと練習して、次は勝ちましょう…絶対」ケイタの言葉にみんな頷いた。
 初心者も経験者も関係なく、誰もが本気で悔しがってる。もっと上手くなりたい、もっと良いサッカーをしたいって、そんな顔をしてる。誰かのミスを責めるでもなく、自分自信がもっとってね。そんな姿を見て俺は確信した。
 このチームは強くなる。

 次の日のバイトは最悪だった。日曜日なだけにそれなりに店は混んでて忙しく、筋肉痛で体のいたるところが悲鳴を上げてた。子供の頃は日が暮れるまで遊びまわっても、次の日にはケロッとしてまた遊びまわってたってのに。
 暇をみつけてはみんながサッカーコーナーに現れ、昨日の試合の話やどうすれば強くなるかなんて事を話し合って、まるでミーティングルーム。ここは職場だってのに。
 「なにしていいか分かんなくてさ、ただ前の方でフラフラしてただけだったよ…」よっPは何も出来なかった自分の不甲斐なさをそう言って悔しがり、FWってどう動けばいいのかとか、家で暇なときにできる練習ってなんかないかとか、質問が浮かぶ度に何度もケイタや俺に聞きに来た。
 「まずはポジションを固定しましょう、あとはやっぱり基礎ですね」昨日の敗戦から、アッチはしっかりとポジションを決めて練習することを提案。確かに、まずは自分のポジションの動きに慣れることが必要だ。
 「みんな本気で悔しがってますよね、なんかイイですよね」そう言ってケイタは嬉しそうな顔をした。朝から1番悔しそうにしてるのはケイタだってのに。
 「昨日はホント悔しくて…あの後、兄ちゃんと夜中に家の前で練習してました」あきらかにケンは寝不足の顔。そういえばマサも朝からグッタリとした顔をしてた。
 疲れてたけど、なんだか嬉しくてワクワクしてた。これからのことを考えると最高の気分。お客さんにちょっと高めのスパイクを勧めながら、頭の中はサッカーのことでいっぱいだった。
 バルセロナのレプリカゲームシャツを見ていたお客さんに声をかけて話してるときに、フッと思ったんだよね。これから1番最初にまずやらなきゃいけないこと…ってかやりたいこと。
 ユニフォームを作ろう!!



★↑↑面白かった~って方、こいつをクリックよろしくです★
★でも一番嬉しいのはやっぱりコメントですね★

 

第13話 『ウサギの正装』

 アッズッロって名前を背負ったからには、ユニフォームの色はもう決まってる。真っ先に思いついたのはイタリア代表、アッズーリのユニフォーム。プーマのそれはバッジョが代表最後の試合で着た、俺にとって特別なモノ。インテルのユニフォームも捨てがたい。1番好きなチームだし、デザインもカッコイイ。
 「俺はコレがイイです」そう言ってケイタが手に取ったのはレアルの03-04シーズンAWAY、アディダスの紺色のユニフォーム。しっとりとした肌触りで着心地の良さそうなやつ。
 ケイタも俺もニヤニヤしながら選んでいたんだけど、ユニフォーム代に名前と番号のマーキング代、パンツとソックスも揃えると…けっこうな金額になる。フリーターで、ある程度収入のある連中はイイとして、学生には辛い額。もっと安いの探さないと…
 
 ソレを見つけたのはケイタだった。旧品の値下げで倉庫から商品を引っ張り出してるときに偶然発見して、走って売り場にいる俺のトコまで持ってきた。
 JOMAのユニフォームセット。シャツにパンツ、ソックスまでセットになって驚きのプライス。
 「ヤバいなそれ、あの頃のアルゼンチンっぽいじゃん」レプリカってわけじゃないんだけど、マラドーナの頃のアルゼンチンそっくりなデザイン。
 「すげぇ、カッコイイですよね」ケイタもかなり気に入っている様子だった。
 よっPにアッチ、ケンもマサもそれを見て一発で気に入った。サッカー好きにとってそれはまさに神の正装。それでいて値段も安いんだから文句ナシ。
 「マジでかっこいいですね!俺、似合うかな、ちょっと着てみていいですか?」ユニフォームを持ってフィッティングルームに入ろうとするマサにみんなの視線が集まった。
 「…ってかさ、マサは似合わなくても関係ないじゃん。キーパーなんだから」よっPに言われてマサは驚いた顔。ホントに気付いてなかったみたいだ。
 「いや、でも…あの…みんなと同じじゃダメ?」
 「うん、ダメ」
 けっきょく、マサはとりあえず一度それを着てみてからGK用のユニフォームを探し始めた。試着したものの、そのユニフォームが全く似合わなくてみんなに大笑いされ、半分イジケた顔で。
 アッズッロってのは確か濃い青色のことだったと思うんだけど、多少薄くて縦縞だっていいじゃないか。勝手な言い分で自分を納得させて、そのユニフォームを試着してみた。
 安いわりに着心地も悪くないし、なんだか着ただけで上手くなったような気分。順番にみんな試着してみて完全に決定した。こいつがウサギの正装だ。



★たくさんのコメント感謝しております。ホント嬉しいです★
☆CLも始まったので夜な夜な頑張って書いております☆

 
 

第14話 『ある雨の日』

 その日は朝から雨だった。
 せっかくの土曜日だってのに天気予報が大当たり。窓を叩くぐらい強く降ったり、ポチャンポチャンと柔らかく降ってみたり、とにかくずっと雨。止む気配は全くなかった。
 ちょっとぐらいの雨なら大丈夫だと思ったんだけど、さすがに朝からずっとの雨じゃ、グランドがぐちゃぐちゃになってて使えそうにない。せっかく何回かの練習でチームはイイ感じに馴染んできたのに。
 休憩中、ご飯を買いに近くのコンビニまで、朝よりはだいぶマシになってはいたけど、やっぱり雨。おにぎりとお茶を買って休憩室に戻ると、出るときはいなかったユミが休憩に入っていた。
 「おっ、ユミも休憩か」
 「はい、今入ったばっかりですよ」幸せそうにお弁当を食べながら、ユミは人懐っこい笑顔を見せた。ユミは高校を卒業したばかりの19歳。ポッチャリとした感じで、けっこう可愛らしい顔をしている。東京の大学に行った彼氏のトコに行くためにお金を貯めてるフリーター。
 「そう言えばさ、ケイタってユミの後輩だろ?あいつってなんで部活でサッカーやってないの?」ふと気になって聞いてみた。あれだけサッカー好きな奴が部活に入ってないなんて不思議な話だ。
 「ケイタは2年生から編入してきたんですよ、そのまえは室蘭の高校に行ってたみたいで…」
 「室蘭って…あの室蘭?」室蘭といえば北海道で1番有名なサッカーの名門校だ。
 「そうですよ、でも練習で怪我したらしくて、辞めて帰ってきたんですよ。編入してきてから部活にも一応入ったんですけど、怪我で練習とかもあんまりできなくて」
 「そっか…」話しを聞いてなんだか納得。確かに、怪我でもしない限りあいつがサッカーをやめるなんて有り得ない。ずっとサッカーができなかった分、今は楽しくてしょうがないんだろう。だからきっといつも笑ってるんだ。

 バイトが終わって家に帰る。雨はまだ降り止まない。
 いきなり予定がなくなったから、特にすることもなくテレビを点けてボーっとする。チャンピオンズリーグのダイジェストを眺めてて、気が付いたら7時になっていた。そういえば雨で使用しないときも管理人さんに連絡してくれって言われてたのを思い出し、慌てて学校に電話をかけた。
 「どうも…雨がちょっとヒドいんで今日は練習中止しにしますね」
 「おう、そうか。あ、でも、もう誰か来てたぞ…」管理人さんに言われて俺はまさかって思った。この雨の中で練習しようなんて奴は…1人だけいた。電話を切ってからすぐにケイタの携帯を鳴らしてみたけど、ケイタは電話に出ない。
 急いで着替えてから車を走らせた。
 学校に着くと、グランドにはびしょ濡れになりながらボールを蹴っているケイタの姿。俺は半分呆れた顔でグランドに。
 「おはようございます!やっぱりこの雨だとみんな来ないですね」泥だらけになりながら微笑むケイタ。俺がもしサッカーの神様だったら、嬉しくて抱きしめてやっただろうに。
 「ホントにおまえは…」言いかけてから苦笑いして、俺もスパイクに履き替えた。雨なんてもうどうでもいい。「よし、やるか…」
 2人でずぶ濡れになりながらボールを蹴っていたら、しばらくしてフザケるなってぐらい強烈な雨。さすがに限界を感じ、大急ぎで車に駆け込んで避難した。
 「止まないですかね…」窓の外を眺めてボソッと呟いたケイタを見て、俺はおかしくって声を出して大笑いした。サッカーが好きとかそういうレベルじゃない。
 こいつはアズレプの魂だ。



★寝不足ながらなんとか頑張ってます!応援のコメント、ワンクリック大歓迎です★
★最近ヤンチャにサッカーしてたら足にヒビが…↓↓★
★次回第15話 9/20UP予定です★
 
 

第15話 『第2回アズレプ会議』

 バイト帰り、いつものバーガーショップ、集まったのは俺とアッチ、そしてよっP。年長組によるアズレプ会議だ。議題はフォーメーションをどうするか。
 何人かの友達に、社会人サッカーをやってる人がいたら、練習試合をしたいから紹介して、ってメールを送ったら、1人の女友達から良い返事が返ってきた。社会人サッカーではないけど、その子が通ってる専門学校のサッカーチームが是非試合したいって。もちろん大喜びでお願いした。次の試合、相手は福祉専門学校のチーム。そのための作戦会議。
 話し合いの結果、フォーメーションは4-4-1、中盤は菱形にすることに決定した。前回の試合の前半と後半の間を取った感じ。
 「早く11人でサッカーしたいね」よっPはそう言いながら、冷えてモサモサになったフライドポテトを口に運んだ。確かに、やっぱりサッカーは11人でやるもんだ。今回もワッタはバイトで来れないから仕方ないんだけど。
 「問題はサイドバックですよね」2杯目のココアを飲みながらアッチが呟いた。
 基礎練習をみっちりやってるおかげで、マッチョもケンも初心者にしてはかなり上手くなってきた。特にケンは同い年のケイタに対抗意識を燃やして、学校の昼休みも練習しているらしく、上達が早い。それでもまだ1回しか試合をしていないから不安は拭えない。
 「DFはね、経験を積むしかないからな、後はキーパーのカメだな…」そう俺が言って3人とも笑った。すっかり最近じゃマサのあだ名はカメ。ユニフォームの名前もKAMEにしてやろうか。
 「でも、最近ちょっとGKらしくなってきたよね」実際最近のカメは、セリエAとかプレミアの試合を観てGKの動きを勉強しているらしく、それなりにらしい動きになってきている。
 「とりあえず今はチームが経験を積むことが優先だな、そのための試合って感じで」みんな頷いたけど、それでも勝つことだけしか考えてない。やるからにはね、負けたくない。
 「…ってかさ、みんな1番大事なこと忘れてるよね」いきなり真面目な顔でよっPがそう言って、俺とアッチは何のことだか分からずに顔を見合わせた。目線を戻すと、よっPはまだ真面目な顔。
 「アレだよ、マネージャーの女の子。早く見つけないと」真剣な顔でそんなことを言うから、俺もアッチも声を出して大笑い。
 「ホント、よっPは…でも大事だよな、女の子の応援とかね」
 「だろ?絶対必要だって。タオルとか渡されたいじゃん」
 「確かに…必要ですね」
 よっPの希望は、可愛くてあんまりサッカーに詳しくなくて、それでいてサッカーを観るのが大好きな十代の女の子。彼氏のいない女子高生って要望は却下。
 またオーナーの仕事が1つ増えた。



★たくさんのコメント・感想ありがとうございます!スッゴイ嬉しいです★
☆次回、第16話は9/22UP予定です☆
★バッジョ現役復帰の噂…もう1度、たとえ1分だけでも観たいです★
 
 

第16話  『色々と羨ましい…』

 みんなが集合してすぐに、ホワイトボードを使ってフォーメーションと戦術の確認。4バックのディフェンスラインは前回と変わらず、右にケン、左にマッチョ、センターにアタルとユアサ。中盤はワンボランチでアッチ、左サイドにタクちゃん、右サイドはケイタ、そして菱形の頂点、トップ下の位置に俺。ワントップはよっPだ。
 両サイドバックのポジショニングをもう一度確認した。練習のなかで何度も修正はしてるけど念のため。作戦は単純に、クリアボールはサイドへ、タクちゃんとケイタを起点にして攻める。
 相手チームの代表と軽い挨拶、試合時間と人数を確認してから、それぞれにアップを始めた。試合開始は30分後。
 パス回しを軽くしてから、ラストの15分は攻めと守りに分かれてのフォーメーション練習。5分前に終わらせ、もう1度集まり、水分補給とミーティング。
 「あっ、イイな~イングランド代表だ」ユニフォームに着替えた相手を見て、アッチが羨ましそうにそう言った。2002年イングランド代表モデルの白。赤いラインの入ったシンプルなアンブロのゲームシャツ。
 「いや、絶対オレらの方がカッコイイです…」ケイタがそれにボソッと返した。ここでも負けず嫌いを発揮。けど、まだユニフォームは出来上がってないので俺たちはナイキの緑色したビブス。
 いつもよりみんなソワソワした雰囲気だった。試合だからってのもあるんだけど、理由はたぶん他にある。相手チームの応援に来た女の子たちがいるからだ。
 「やっぱり必要だな」よっPはそう言いながら女の子たちを眺めてた。福祉の専門学校って言ってたからそこの生徒たちなんだろう、相手ベンチには5人の女の子。アズレプのベンチにはドリンクと荷物。
 「あんなの見せられたら負けられないっすね」
 「負けられね~な!」頷き合ったユアサとアタルが両手でハイタッチをして気合いを入れた。それを見てたタクちゃんは苦笑い。
 「よし、そろそろ行こう」キャプテンのアッチが先頭をきって、うさぎたちはゾロゾロとピッチに散らばっていった。

 序盤戦は一進一退の攻防、中盤のつぶし合いになった。
 俺はトップ下よりやや下がりめまで戻って、アッチと2人で相手のセンターハーフを自由にさせないようプレー。タクちゃんとケイタも下がり気味で、まずはディフェンスからって感じだ。
 学生のチームだけあって、よく走るし連携もそれなりにできている。目立って上手い奴はいないんだけど、なんだか地味にまとまったサッカーをしてくる相手に、アズレプは次第に攻め込まれ始めた。
 そして前半17分、抜かれそうになったケンが相手の腕を掴んで倒してしまい、明らかなファール、嫌な位置からのFKを与えてしまった。
 偽イングランド代表11番の蹴ったボールはGKカメの正面へ、だがこのシュートをカメはファンブル、こぼれたトコロをFWに決められてしまった。大喜びでキャーキャーと声を上げる相手ベンチ。
 「まだ大丈夫だって!」落ち込んで肩を落としたマサの背中を、駆け寄ったケンがポンポンッと2度叩いた。カメは「大丈夫だ」と顔を上げ、両の拳を合わせて気持ちを切り替えた。
 ひと呼吸吐いてから周りを見渡す、ケイタとタクちゃんと目があった。センターサークルにはよっP。みんな攻めたくてしょうがないって顔してやがる。アッチからも『行ってこい』のサインが出た。
 さぁ、反撃開始だ。



★コメント・感想・ワンクリック…いただけると嬉しいです★ 
☆反撃開始の第17話は9/23UP予定☆
★アズレプサポーター・マネージャー募集中です。笑★ 
 

第17話 『勢い良く。勢い良く…』

 「ユアサ、ボランチに上がれ!アタル任せたぞ!」アッチの指示で最終ラインは3枚に、ユアサを前に上げてダブルボランチにして、ケイタとタクちゃんの守備の負担を減らす。俺もそれに伴って本来のトップ下の位置まで上がった。普段は守備の意識の強いアッチだけど、1失点したことでガラッと攻撃的になる。こいつもなに気に負けず嫌いだ。
 1枚減ったDFラインの裏を何度も狙われたけど、持ち前の運動量とスピードで、アタルがなんとかソレを食い止め続けた。
 「ライン上げよう」取り返すとアタルは声を出して、ズルズルと下がりっぱなしになったDFラインを修正する。
 俺はボールを追っかけまわして前線からプレッシャーをかけた。相手が苦し紛れのパスを出せば、ケイタとタクちゃんがそれを奪う。
 「逆サイド!タクちゃんフリーだ!」上手い具合にケイタがボールを奪った瞬間、左サイドのタクちゃんが相手DFの裏を取ってフリーに。よっPの声でそれに気が付いたケイタは狙いすましたロングボールを送った。
 全速力で走りながら、タクちゃんは送られてきたボールをつま先で軽く触ってトラップ、しなやかなタッチで完全にボールの勢いを殺した。
 「マジかよ!?」あまりに芸術的なボールコントロールに思わず声が漏れた。まるでベルカンプだ。シュートは残念ながらバーの上に外れたけど、そのワンプレーには相手の選手からも賞賛の声。
 前半24分、今度はケイタが魅せた。右サイドでパスを受けると、そのままドリブルで持って上がり中に切り込む、DF2人を抜き去ってから強烈なミドルシュート、GKは全く反応できなかったけど、惜しくもボールはポストに嫌われて弾き返された。
 完全に流れがきていた。
 そして前半29分、ケイタが右サイドをえぐって上げたクロス。よっPと相手DFの頭を越えて逆サイドに流れたボールをタクちゃんがダイレクトでシュート、GKがなんとか弾いたボール、つめていた俺はなんなくゴールに押し込んだ。
 相手ベンチの黄色い悲鳴と、ウサギたちの歓喜の叫び。小さなガッツポーズ、ほとんどタクちゃんの得点みたいなもんだけど。走って自陣まで戻る、まだまだ攻め足りない。今なら何点だって取れそうな気がする。
 …なのに、ここで前半終了の笛。

 「絶対逆転できるぞ!」みんな汗だくで疲れきってたけど、テンションはガンガン上がってた。肩で息をしながら再度ポジションを確認。ドリンクを飲めるだけ喉に流し込んで、勢い良くピッチに散らばって後半戦に臨む。
 後半もアズレプは攻め続けた。何度もサイドを基点に相手DFを崩すんだけど、フィニッシュの精度を欠いて得点を奪えない。俺、ケイタ、よっPとつないで最後はタクちゃんへ、前に出たGKの動きを見て冷静に放たれたループシュートも、ゴール寸前のところでDFに掻き出されてしまった。
 メンバーを何人か入れ替えてきた相手に対して、10人丁度しかいないアズレプ。しだいに疲れから足が止まり、なかなかボールを拾えなくなる。攻め込まれる時間帯、ズルズルと押し込まれ始めたDFライン。
 後半20分、早めに入れられた相手のロングボールをアタルがヘディングでサイドにクリア、そのボールがケンの目の前へ。逆サイドのタクちゃんまで届かせようと、ケンは渾身の力を込めて右足を振りぬいた。
 「ぐふっ…」蹴られたボールは狙いを大きく逸れて、勢い良くアタルのみぞおち辺りにヒット…お腹を押さえて苦しがるアタルを尻目に、こぼれたボールを拾った相手のFWがカメと1対1になり、冷静にゴール右隅に蹴りこんだ。
 痛恨の失点。最後まで諦めずに攻め続けたものの、ゴールを割れぬままゲームセット…
 黄色い歓喜の声の中、アズレプ2度目の敗北。まさかの2連敗。



★またも敗戦を喫してしまったアズレプですが…応援よろしくです★
☆そんなアズレプに声援を…サポーター・マネジャー募集中です。笑☆
 
 
  

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プロフィール

K・J・TAKE

Author:K・J・TAKE
実話から生まれた物語。
色んな奴らが集まって誕生したサッカーチーム『アズレプ』の愛と感動?の日々。

初小説ですけど頑張って書いていこうと思います!
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第1話『退屈』へGO!!

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